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遺産分割が決まるまでの不動産収入は誰が申告するの?

遺産未分割の不動産収入の帰属と申告

※この記事は動画説明付きです。「文章読むのが苦手!」という方は動画をご覧下さい!

アパートや駐車場などを所有して不動産賃貸業を営んでいる方の相続で必ず発生するのが、遺産分割決定までの不動産収入の帰属問題です。

遺言書がある場合には、相続発生時から遺産の取得者が決定するため不動産収入の帰属を気にする必要はないのですが、遺言書がない場合には法律のルールに従って処理をする必要があります。

 

通常、相続開始から遺産分割協議までは数か月程度かかることがほとんどですので仮に遺産分割に半年かかったとして月20万円の賃料収入がある場合には合計120万円の賃料を誰がもらうことができるのかは金額的にも大きな問題となります。もちろん、この金額を誰がもらうのかによって所得税の確定申告にも影響がありますので取り扱いを間違えないように注意が必要です。

 

法律的にもらうことのできるお金をもらえなかったとならないために、そして、確定申告しなければならない項目を見落とさないように遺産未分割時の不動産収入の帰属を知っておきましょう!!

 

遺産分割が決まるまで財産は誰のもの!?

遺産相続で揉めている場合はもちろん、円満相続の場合であっても相続開始から遺産分割協議が整うまでは数か月程度かかってしまうものです。

 

民法(みんぽう)という法律では、遺産分割が決定するまでの遺産は相続人全員の共有状態であると決めています。

こんなイメージ!

遺産分割までは相続人の共有状態

これはなんとなく納得しやすいと思います。

なぜなら、相続人のうちの誰かが取得することになるんだけど、まだそれが確定していないのであれば相続人みんなで協力し合って財産を守ってやらないと!

 

 

 

でも、ここからが問題です。

 

遺産分割が決まったらどうなるの?

あなたはどちらのイメージが正しいと思いますか?

遺産分割の効力 間違い例

遺産分割の効力 正しい例 民法909条

 

答えは!!

 

 

 

 

 

 

 

②の方です!!

またまた、民法という法律で遺産分割が決定したらそれまで共有状態だったことを無視して、遺産を取得した人が相続開始の時から所有者だったんですよ~と決められているんです。

 

 

遺産未分割時の不動産収入は誰のもの!?

遺産の帰属が誰になるのかは分かってもらえたと思います。

では、遺産分割が決まるまでの間に発生した賃料収入はどうなるのでしょう?

こんなイメージです。

 

 

むかし、こんな事件(あらそいごと)がありました。

※分かりやすくするために事実と異なる内容を含んで説明をしていますが、実例です。詳細は平成17年9月8日最高裁判例(預託金返還請求事件)をご覧ください。

 

アパートを所有している男性が亡くなりました。

相続人は子供3人と子供たちの母(相続人の妻)の4人です。

母と子供たちは遺産相続で揉めに揉めて、約3年半もの期間争ったのちに結局は子供たちがアパートを相続することになりました。遺産分割が決まるまではアパートは相続人全員の共有状態ですので、相続人全員の合意のもと母がアパートの賃料や管理費等の管理を行っていました。

そこで遺産分割が決まったのに問題が生じたのです!

 

「遺産未分割だった期間の家賃収入は誰のもの?」って。

 

母は「家賃収入は相続人で共有よ」

子供たちは「家賃収入は相続開始時に遡って帰属するから俺たちもモノだ!」と。

最高裁平成17年9月8日判決

 

せっかく長い長い遺産分割争いが終わったのに、また揉め始めてしまったのです。

 

最高裁平成17年9月8日判決 被上告人の主張

最高裁平成17年9月8日判決 上告人らの主張

あなたはどちらの主張が正しいと思いますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はこれ母の主張が認められたんです!

 

最高裁判所は相続開始から遺産分割が整うまでの間に発生した不動産収入は相続人が法定相続分に応じて取得すると判断したんです。

 

遺産未分割時の賃料収入は共有

 

少し専門的な言葉も出てきますが、これが実際の判決文です。

『遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。』

 

確定申告は相続人全員が法定相続分に応じて行う!

このように最高裁判所が「相続開始から遺産分割決定までの不動産収入は各相続人が受け取れる!」と判断したため税金上も同じように取り扱うことになっています。

今回のようなケースでは母の法定相続分は1/2、子はそれぞれ1/6ですので、この割合に基づいて収入を得たとして確定申告を行うことになります。

 

国税庁もホームページ上のタックスアンサーでこのように取り扱い方を明示しています。

(国税庁ホームページで見る場合はコチラ)

不動産所得の収入計上時期 タックスアンサー1376

Q 賃貸の用に供している不動産を所有していた父が亡くなりましたが、遺言もなく、現在共同相続人である3人の子で遺産分割協議中です。この不動産から生ずる収益は長男の名義の預金口座に入金していますが、不動産所得はその全額を長男が申告すべきでしょうか。

 

A 相続財産について遺産分割が確定していない場合、その相続財産は各共同相続人の共有に属するものとされ、その相続財産から生ずる所得は、各共同相続人にその相続分に応じて帰属するものとなります。したがって、遺産分割協議が整わないため、共同相続人のうちの特定の人がその収益を管理しているような場合であっても、遺産分割が確定するまでは、共同相続人がその法定相続分に応じて申告することとなります。なお、遺産分割協議が整い、分割が確定した場合であっても、その効果は未分割期間中の所得の帰属に影響を及ぼすものではありませんので、分割の確定を理由とする更正の請求又は修正申告を行うことはできません。

 

ちなみに、国税庁のタックスアンサーのように相続人のうちだれか一人が家賃収入を管理している場合には、他の相続人は管理を行っている相続人に対して「不当利得に基づく返還請求権」を持っている状態です。

ざっくりというと、これは「管理してくれてありがとう。でも、未分割だった期間の家賃収入のうち私の分はちゃんと分けっこしてね!」という権利を持っているということです。

 

 

まとめ

相続のこと、税金のことを正しく理解することで知らないうちに損してしまうことを防ぐことができます。

優良な知識を身に着けること!それが、あなたを損から守る唯一の防衛手段です!

 

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この記事を書いた人

相続専門税理士 伊東 秀明

愛知県名古屋市を拠点に活動する相続専門家集団レクサーの代表税理士。 20歳の頃、実家が相続税で失敗したことをきっかけに相続税専門の税理士を目指し、26歳で開業。

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