相続税申告で外貨建て財産を評価する場合の邦貨換算(為替相場)
相続財産の中に外貨預金や外国株式などの外貨建て財産がある場合には、それらの財産を邦貨換算して評価する必要があります。
この時に使用する為替レートは相続があった日の最終の対顧客直物電信買相場(TTB)によって評価することになっており、基本的には納税者の取引金融機関が公表する為替レートを利用することになります。
なお、相続があった日が土日だった場合など、その日に為替相場がない場合には相続があった日より前の日で最も近い日の最終の対顧客直物電信買相場(TTB)を利用することになります。
【対顧客直物電信買相場(TTB)とは】
対顧客直物電信買相場(TTB)とは金融機関が顧客から外貨を買って邦貨を支払う場合(顧客側にとっては外貨を円に交換する場合)の相場をいいます。
【対顧客直物電信売相場(TTS)とは】
対顧客直物電信売相場(TTS)とは金融機関が顧客から邦貨を買って外貨を支払う場合(顧客側にとっては円を外貨に交換する場合)の相場をいいます。
相続税申告では外貨建ての債務(借金)を評価する場合にはTTSを使用することになります。
【豆知識①】
金融機関が公表する顧客相場は、外国為替取引の大半を占めるインターバンク市場(銀行間市場)の為替相場をもとに決められ、その為替相場をもとに各金融機関ごとの顧客相場(対顧客直物電信買相場(TTB)や対顧客直物電信売相場(TTS))を決めています。
また、証券会社等でもインターバンク市場(銀行間市場)の為替相場をもとに独自の為替レートを決定して邦貨換算しているところもあります。このような場合には、TTBに準ずる為替相場として、その証券会社等が採用している為替レートで邦貨換算することが認められています。
【豆知識②】
通常、銀行等が一般顧客に示すTTBは一日に一つの相場ですが、変動が大きい場合には値を決めなおすことがあります。
そのため、相続税の評価においては混乱が生じないように課税時期の最終のTTBを使用するというルールになっています。
【納税者の取引金融機関とは】
外貨預金等のように取引金融機関が特定されているものについては、その金融機関が公表するTTBによって邦貨換算を行います。
一方で国外にある土地等の財産については金融機関の特定ができないため、相続人が取引している金融機関の為替レートを確認することが一般的で簡便ですので、相続人が取引のある金融機関が公表するTTBを利用して邦貨換算します。なお、この場合には取引のある複数の金融機関の中から任意に選択した金融機関のTTBを利用することができます。
根拠法令(財産評価基本通達4-3)
外貨建てによる財産及び国外にある財産の邦貨換算は、原則として、納税義務者の取引金融機関(外貨預金等、取引金融機関が特定されている場合は、その取引金融機関)が公表する課税時期における最終の為替相場(邦貨換算を行なう場合の外国為替の売買相場のうち、いわゆる対顧客直物電信買相場又はこれに準ずる相場をいう。また、課税時期に当該相場がない場合には、課税時期前の当該相場のうち、課税時期に最も近い日の当該相場とする。)による。
なお、先物外国為替契約(課税時期において選択権を行使していない選択権付為替予約を除く。)を締結していることによりその財産についての為替相場が確定している場合には、当該先物外国為替契約により確定している為替相場による。
(注) 外貨建てによる債務を邦貨換算する場合には、この項の「対顧客直物電信買相場」を「対顧客直物電信売相場」と読み替えて適用することに留意する。
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この記事を書いた人
相続専門税理士 伊東 秀明
愛知県名古屋市を拠点に活動する相続専門家集団レクサーの代表税理士。 20歳の頃、実家が相続税で失敗したことをきっかけに相続税専門の税理士を目指し、26歳で開業。
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