相続税の節税対策には様々な方法が存在します。
その中でも王道中の王道と言われる方法が「養子縁組」です。
しかし、そんな養子縁組を利用した相続税の節税対策ですが「不当減少養子の否認規程」と呼ばれる伝説の規定が存在することをご存じでしょうか?
今回はいまだかつて発動されたことがないと言われる伝説の規定「不当減少養子の否認規程」について解説していきます。
不当減少養子の否認規程とは?!
相続税の計算をするうえで「相続人の数」は非常に重要な役割を果たします。
例えば、
①基礎控除額の計算
②相続税の総額の計算
③死亡保険金の非課税枠の計算
④死亡退職金の非課税枠の計算
が挙げられます。
そこで、相続税法では相続税の計算上考慮することのできる相続人の数に制限を加えており
①被相続人に子供がいる場合には、相続人の数に含めることのできる養子の数は1人
②被相続人に子供がいない場合には、相続人の数に含めることのできる養子の数は2人
までとしています。ちなみにこれは昭和63年の税制改正で講じられた措置です。
しかし、この措置をもってしてもなお1人又は2人の養子を相続人の数に参入することが相続税の負担が不当に減少する結果となる場合には、税務署長はその養子を相続人の数に含めないで相続税の計算をして、更正や決定をすることができることになっています。
これが「不当減少養子の否認規程」です。
実際の条文がこちらです。↓↓
【相続税法第63条】
第十五条第二項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)及び相続税額を計算することができる。
不当減少養子に該当すると財産を相続できないのか?
では、税務署長が不当減少養子に該当すると判断した場合、その養子は被相続人の財産を相続することができなくなるのでしょうか?
答えはNOです。
「不当減少養子の否認規程」はあくまでも相続税を計算するうえでの規定であって、民法上の養子縁組の効力や養子としての相続人の地位を否定するものではありません。
そのため、不当減少養子に該当したとしても財産を相続することができます。
なお、養子縁組の意思を欠いている養子縁組は民法上も無効と解されていますので、その場合には不当減少養子ではなく、相続人の地位すら有しないことになりますので違いに注意する必要があるでしょう。
不当減少養子に該当するかの判断
どのような場合に不当減少養子に該当するのかの判断は個々の事例ごとに異なり、一義的に定められていません。
ただし一般的には養子縁組の目的が相続人の数の増加だけであり、相続税の節税目的以外の目的がない場合には不当減少養子に該当すると考えられていますが、養子縁組の目的に注目することは主観的ですので、実際の課税実務においては国税当局が主観を裏付ける証拠の裏付けをして立証していくことになると思われます。
つまり、立証はかなり難しいということです。
なお、嘘かほんと定かではありませんが、業界内では「不当減少養子の否認規程」が発動された事例はないと言われています。
伝説の規定と言われるのも納得です。
いずれにしろ、「不当減少養子の否認規程」が条文上存在する以上、節税対策を行う上では頭の片隅に入れておいた方がいいでしょうし、予期せぬ発動をされないように「養子になることで将来の生計に配慮するため」「療養看護や財産管理のため」「相続による財産の承継をするため」「より親交の深い者との親子関係を作るため」などといった養子縁組の意味づけをしておいた方が無難でしょう。
まとめ
いかがでしたか?
王道中の王道と言われる節税対策にも思わぬ落とし穴は潜んでいるものです。
相続税の節税を行う際には落とし穴にはまらないためにも税理士に相談しながら進めることをお勧めします。
名古屋の相続専門税理士事務所レクサーでは相続税の節税支援が得意ですので是非ご相談ください。
愛知県名古屋市を拠点に活動する相続専門家集団レクサーの代表税理士。
20歳の頃、実家が相続税で失敗したことをきっかけに相続税専門の税理士を目指し、26歳で開業。
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