愛知県名古屋市を拠点に活動する相続専門家集団レクサーの代表税理士。
20歳の頃、実家が相続税で失敗したことをきっかけに相続税専門の税理士を目指し、26歳で開業。
今回は平成30年1月1日以降に発生した相続や贈与に適用される「地積規模の大きな宅地」という土地の評価方法について名古屋で一番わかりやすく解説します。
土地評価の基礎知識についてはこちらの相続解説動画「相続紙芝居」をご覧ください。
地積規模の大きな宅地とは!?
地積規模の大きな宅地とは相続税や贈与税の計算のもととなる土地を評価するときの評価方法で、
三大都市圏では500㎡以上の大きさ、
三大都市圏以外では1,000㎡以上の大きさ
がある土地については通常よりも評価額を減額してくれるという制度です。
なぜ土地が大きいと減額してくれるのかって?
それは「理想的な土地」という考え方があるからです!
相続税が想定する理想的な土地とは!?
地域によって価値観の違いが若干ありますが、相続税を計算する上での理想的な土地は次の三つの条件を満たす土地です。
①道路に面している
②形がキレイ
③大きすぎず、小さすぎない
日本にある土地の上に建物を建築しようと思うと建築基準法という法律の規定に従わなければ建築できないことになっています。
この建築基準法では、建築しようと思っている土地は幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があると定められています。
つまり、そもそも道路に接していない土地については建物を建てることができないため、価値が低いということになります。
建物を建てられない土地を買いたいか買いたくないかと言ったら、普通は買いたくないはずです。
相続税の計算でもこれを加味して「道路に面している」ということを理想的な条件の一つにしているわけです!
では、形のキレイさはどうでしょうか!?
ちなみに四角形が理想的です!
これは単純に四角形の土地の方が建物を建てやすいですし、建物の計上の自由度が高いからです。
上のイメージ図のように、同じ面積で同じ値段であれば形がキレイな方の土地を買いたいですよね。
相続税を計算するときの土地評価でもまったく同じで、キレイな形の土地の方を理想形と考えて、形が四角形からズレていくごとに評価額を減少させていくのです!
では土地の大きさはどうでしょう!?
当然、小さい土地には建物を建てづらいですし、建てられる建物の規模がある程度制限されてしまいます。
じゃあ、大きいに越したことはない?
ホントに!?
土地が大きければその分、毎年支払う固定資産税も高くなります。
買うときの値段も高くなります。
広い分、買った後の手入れも大変です。
「私は大きなお庭つきの土地がいいわ♪」という方は一般的には少数派で、大多数は経済的にも丁度いい土地が欲しいはずです。
土地を売却する不動産屋にとっても大きすぎる土地は下の図のように小さく小分けして売った方が売りやすいというわけです。
例えば、土地の分筆をすることで奥側の土地に出入りできるように路地を設けてみたり。
ちなみにこのような土地を旗竿地と言ったりします。
地域によっては延長敷地とか、路地状敷地と言ったりもします。
他にも、新しい道路(位置指定道路)を設けて、キレイで丁度いい大きさの土地を作ったり。
ちなみに、平成29年12月31日までの相続や贈与については、このように新しい道路を設けた方が土地の有効利用ができると判断されるような土地については「広大地」という評価方法を適用することができました。
平成30年以降の相続や贈与については廃止されていますが。
その代わりに、今回のテーマである「地積規模の大きな宅地」の評価方法ができたというわけです。
いずれにしろ、大きすぎる土地はこのようにお金をかけて小分けしなければ実際には売れないということです。
相続税の計算でもそのことを考慮して大きい土地については評価を減額させてあげましょう!ということになっているのです。
地積規模の大きな宅地とはどんな土地か?
地積規模の大きな土地。
つまり、大きすぎる土地かどうかはその土地がどの地域に存在しているのかによって変化します。
これについて国税庁は次のような明確な基準を設けています。
三大都市圏については500㎡以上
三大都市圏以外は1,000㎡以上
です。
☆評価する土地が共有地の場合の地積規模判定についてはコチラの記事をご覧下さい。
三大都市圏と聞くと東京、大阪、名古屋というイメージですが、実際にはその周辺地域も含まれており、具体的には下の図が三大都市圏として500㎡以上あれば地積規模の大きな土地の評価を適用できる地域となります。
逆に、この名前の載っていない地域については1,000㎡以上あれば地積規模の大きな土地が適用できることになります。
ただし、これだけで地積規模の大きな宅地評価が適用できるわけではありません。
他にもざっくり次の4つの条件をクリアする必要があります。
①路線価図の「普通商業・併用住宅地区」又は「普通住宅地区」のどちらかに所在すること
※正面路線の地区区分が2以上ある場合の地区判定ついてはコチラの記事をご覧ください!
②市街化調整区域に所在する土地ではないこと(ただし、市街化調整区域であっても都市計画法34条10条又は11条の宅地分譲開発ができる地域であればOK)
③用途地域が工業専用地域ではないこと
④指定容積率が400%以上(東京都特別区は300%以上)の地域ではないこと
※容積率の判定方法はコチラの記事をご覧ください!
実際の適用にあたっては国税庁の発表しているフローチャートが便利です。
地積規模の大きな宅地の計算方法
地積規模の大きな宅地の評価方法は、路線価地域にある土地については通常通りの土地評価を行い、それに「規模格差補正率」を乗じて計算することになります。
具体的な算式は次のとおりです。
倍率地域ある土地については次の①と②のいずれか小さい金額に「規模格差補正率」を乗じることで計算します。
①その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
②その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額
規模格差補正率の算出方法
規模格差補正率は次の算式に当てはめて計算します。
なお、次の算式で計算された数値は、小数点以下2位未満は切り捨てます。
Aについては評価しようとしている土地の面積を入れます。
BとCについては次の表にあてはめて入れるべき数値を選択します。
つまり、規模格差補正率は評価する土地の大きさや所在する地域によって変化するということになります。
基本的には表と見比べて当てはめるだけなので簡単かと思います。
具体的な規模格差補正率
実際に規模格差補正率がどのくらいか計算してみました。
地積規模の大きな宅地に該当した場合には、通常通り計算した土地の評価額にこの規模格差補正率を乗じることになります。
つまり、三大都市圏で500㎡の土地については0.8を乗じるため、通常の土地評価より0.2(20%)の土地評価減額効果があるということになります。
まとめ
地積規模の大きな宅地評価はこれまでの広大地評価に比べて適用するための要件が明確になったことで、適用可能か否かの判断が簡単になりました。また、広大地評価の時代には併用できなかった土地の評価減額要因との併用が可能になった点もありますので、土地評価に詳しい税理士にとっては使いやすい制度と言えます。
逆に、土地評価そのものの基礎知識がないことには地積規模の大きな宅地評価に至るまでのその他の評価減額要因を見落としてしまう可能性のある制度です。
土地評価で失敗して必要以上の税金を支払うことにならないように気を付けましょう!
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三大都市圏とは!?
地積規模の大きな宅地評価を適用する際の三大都市圏とは、以下の地域を指します。
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
③中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
500㎡以上あれば適用対象となる地域
※【】内の地域については一部の地域限定ですので、ご注意ください。
東京都
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※【】内の地域については一部の地域限定ですので、ご注意ください。
※岐阜県(岐阜市、大垣市、多治見市など岐阜県全域)は三大都市圏に含まれませんのでご注意ください!