【事例】
太郎さんは店子付き(たなこつき)貸家を3,000万円で売却しました。
店子からは保証金として50万円を預かっていましたが、預り保証金については持ち回りとする旨を、売買契約書で合意しました。
この場合、太郎さんの譲渡所得の確定申告において預り保証金はどのように処理すればいいでしょうか?
(※)「店子(たなこ)」とは部屋を借りている人のことです。
(※)「預り保証金の持ち回り」とは、貸家の売却時に売主が預かっている保証金を買主との間で清算せずに、買主が保証金返還債務を引き継ぐことです。この場合、店子が退去した場合には買主が保証金を返還することになります。
【誤った取扱い】
預り保証金を持ち回りにしたにもかかわらず、実際に受領した金額である3,000万円を譲渡価額として確定申告を行った。
【正しい取扱い】
持ち回り保証金50万円は譲渡価額に含まれます。
これは、太郎さんは本来店子に対して預り保証金の返還債務を負っていますが、その返還債務が持ち回りによって買主に引き継がれたため、返還債務である50万円相当の経済的利益を享受したと考えられるためです。
このように、譲渡所得を計算するうえでは、実際に金銭を授受していない項目のものでも譲渡所得の対象となるケースがありますので注意が必要です。
根拠法令(所得税法36①②)
①その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
②前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
愛知県名古屋市を拠点に活動する相続専門家集団レクサーの代表税理士。
20歳の頃、実家が相続税で失敗したことをきっかけに相続税専門の税理士を目指し、26歳で開業。
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